「最近、疲れやすくなった」「外出がおっくうになった」「食欲が落ちた気がする」──そんなサインを感じたら、それは「フレイル」の入り口かもしれません。
フレイルとは、加齢に伴って心身の活力が低下し、健康な状態と要介護状態の中間にある段階のことです。2014年に日本老年医学会が提唱した概念で、適切な対策を取れば健康な状態に戻れる「可逆性」があるのが大きな特徴です。
研究によると、日本の65歳以上の約11.5%がフレイルに該当し、予備軍まで含めると約3割に達するとされています。80歳以上では実に35%がフレイル状態にあるという報告もあります。しかし、早期に気づいて適切な予防策を実践すれば、要介護状態への進行を防ぐことができます。
この記事では、フレイル予防の3つの柱である「運動」「食事(栄養)」「社会参加」について、具体的な実践方法をわかりやすく解説します。
フレイルとは? まずは正しく理解しよう
フレイルの定義と種類
フレイル(Frailty)は、英語の「虚弱」を意味する言葉から来ています。大きく3つの種類に分けられます。
「身体的フレイル」は、筋力低下や歩行速度の低下など、体の衰えが中心です。「精神・心理的フレイル」は、意欲の低下や認知機能の衰え、うつ傾向などを指します。「社会的フレイル」は、外出機会の減少や人との交流の希薄化による孤立状態です。これら3つは互いに影響し合っており、一つが悪化すると連鎖的に他のフレイルも進行するのが特徴です。
フレイルのセルフチェック
以下の5つのうち、3つ以上に当てはまるとフレイルの可能性があります。1〜2つなら「プレフレイル(予備軍)」です。(1)体重が半年で2〜3kg以上減った。(2)以前より疲れやすくなった。(3)筋力(握力)が低下した。(4)歩く速度が遅くなった。(5)身体活動量が減った。当てはまる項目がある方は、かかりつけ医に相談してみましょう。
フレイル予防の柱①:運動
筋肉量は年齢とともに減少しますが、何歳からでもトレーニングの効果は得られます。フレイル予防には、筋力を鍛える「レジスタンス運動」、転倒を防ぐ「バランス運動」、持久力を高める「有酸素運動」を組み合わせるのが効果的です。
自宅でできるおすすめ運動
スクワットは下半身の筋力強化に最も効果的なエクササイズの一つです。イスの背もたれにつかまりながら、膝がつま先より前に出ないように注意して行いましょう。最初は5回から始めて、慣れてきたら10回、3セットを目標にします。
かかと上げ(カーフレイズ)は、ふくらはぎの筋肉を鍛え、歩行能力の維持に効果があります。つま先立ちになり、ゆっくりとかかとを下ろす動作を繰り返します。キッチンで料理をしながらでもできる「ながら運動」としてもおすすめです。
片足立ちはバランス能力の向上に効果的です。テーブルや壁に軽く手を添えて、片足で30秒間立つ練習をしましょう。転倒予防に直結するトレーニングです。
運動を続けるコツ
大切なのは「無理をしない」「楽しみながら続ける」ことです。ウォーキングなら友人と一緒に行く、好きな音楽を聴きながらストレッチするなど、楽しい要素を組み合わせると習慣化しやすくなります。地域の体操教室やスポーツサークルに参加すれば、運動と社会参加を同時に実現できます。

フレイル予防の柱②:食事(栄養)
高齢期の栄養管理で最も注意すべきなのは「低栄養」です。中年期は「メタボ対策」として食事量を控えめにしてきた方も多いですが、75歳を過ぎたあたりからは「しっかり食べる」ことが重要になります。
たんぱく質を意識的に摂ろう
筋肉の維持にはたんぱく質が不可欠です。1日あたり体重1kgにつき1.0〜1.2gのたんぱく質を摂取することが推奨されています。体重60kgの方なら、1日に60〜72gのたんぱく質が目安です。
効率よくたんぱく質を摂れる食品としては、鶏むね肉やささみ、鮭や鯖などの魚介類、卵、豆腐や納豆といった大豆製品、牛乳やヨーグルトなどの乳製品があります。1食にまとめて摂るのではなく、3食まんべんなく分配して摂ることがポイントです。
運動後の栄養摂取がカギ
運動中は筋たんぱく質の分解が進むため、運動後に何も食べないと逆効果になることがあります。運動後1〜2時間以内にたんぱく質を含む食事やおやつを摂ると、筋肉の合成が効率的に行われます。牛乳やヨーグルト、プロテインバーなどを運動後に摂取する習慣をつけましょう。
お口の健康(オーラルフレイル)にも注意
噛む力や飲み込む力の低下は、食事量の減少に直結し、低栄養の原因になります。「硬いものが食べにくくなった」「食事中にむせることが増えた」などのサインが見られたら、歯科受診をおすすめします。日頃から「あいうべ体操」や「ぱたから体操」など、口腔機能を鍛えるトレーニングも効果的です。

フレイル予防の柱③:社会参加
東京大学高齢社会総合研究機構の研究によると、フレイル予防において「社会参加」は運動や栄養と同等以上に重要であることがわかっています。人とのつながりが希薄になると、外出機会が減り、身体活動量が低下し、食欲も落ちるという悪循環に陥りやすくなります。
社会参加の具体例
地域のボランティアやサークル活動への参加は、社会とのつながりを保つ最も手軽な方法です。町内会の活動、高齢者大学や公民館の講座、趣味のグループ、スポーツクラブなど、さまざまな選択肢があります。
就労を続けることも効果的な社会参加です。パートタイムやボランティア的な仕事でも、社会的な役割を持つことで生きがいや自信につながります。
「おしるこ」のようなシニア向けコミュニティアプリを活用すれば、外出が難しい日でもオンラインで交流を楽しめます。デジタルツールを上手に取り入れて、社会参加のハードルを下げることも大切です。
フレイル予防は何歳から始めるべき?
フレイル予防は「早すぎる」ということはありません。40〜50代のうちから生活習慣を整えておくことが、将来のフレイルリスクを大きく低減します。宮城県をはじめとする複数の自治体では、40〜50代の「働き世代」向けのフレイル予防プログラムも展開されています。
特に注意したいのは、75歳前後の「ギアチェンジ」のタイミングです。それまでのメタボ予防中心の生活から、しっかり食べてしっかり動くフレイル予防型の生活に切り替えることが健康長寿のカギとなります。
まとめ
フレイルは「年だから仕方ない」で片づけてしまいがちですが、適切な予防策を実践すれば回復が可能な状態です。運動・食事・社会参加の3つの柱をバランスよく生活に取り入れることが、健康寿命を延ばす最も確実な方法です。
まずは今日から、エレベーターではなく階段を使う、食事にたんぱく質を一品プラスする、友人に電話をかけてみる──そんな小さな一歩から始めてみませんか。
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