悩みはつらい冷えに肩こり――けれど寒い季節も野外でサッカー観戦を楽しみたい
秋分が過ぎると朝晩は冷え込む日も増えてきた。
水曜の夜。私は仕事を早々に片付けスタジアムへと向かった。
試合のある日は、応援するクラブのためにゴール裏まで駆けつける。それが、若い頃からの習慣だ。
しかし、最近は平日の夜にスタジアムに向かうのがつらくなっていた。
プロリーグ開幕から約30年が経つ。私も、先日50歳の誕生日を迎えた。
スタジアムに通い始めた頃に応援していた選手たちの多くは、今や現役を引退し、監督やコーチ、解説者として活躍している。
「自分も年を取るはずだ」とあらためて思う。
若い頃は、応援しているクラブの選手が代表に選ばれたり、クラブが海外遠征をしたりすれば海外まで行くこともあった。しかし、最近はそんな元気もない。
一日中パソコンに向かって仕事をすることが多いため、慢性的な肩こりに悩んでいる。
肩こりで腕を挙げるのがつらいため、スタジアムでもマフラーやフラッグを振るのがつらくなってきた。
コロナ禍以降はどのチームも手拍子での応援が主流だが、90分間、両手を挙げて手を叩き続けるのは肩こりに悩む自分にとってなかなかつらいものがある。さらに飛び跳ねて応援するから腰や膝にくる。
更年期世代に入ったせいか、冷えや不眠も悩みだ。ぐっすり眠れないまま朝を迎えそのまま仕事に突入するから、疲れが抜けていないのではないかと思っている。
会社の定期健診で異常を指摘されたことはないから、いわゆる更年期の不定愁訴なのだろう。
仕事で体力を使い果たし、スタジアムに着いた時には既にぐったりした状態のことも多い。
しかも、今日は豪雨だ。最悪なことに屋根のない方のホームスタジアムで試合が開催される。
晴天の日でさえ、春先や秋冬の観戦は寒さがこたえるようになってきた。雨の中での観戦は、冷えに悩まされる自分にとって本当につらい。キックオフ直前まで、屋根のある場所で待機することにした。
昔は、どんな天候でもキックオフが近付けばワクワクして身体が温まったのだが……本当に年を取ってしまったものだと感じる。
こんな調子では、週末のアウェイ遠征はさらにきついかもしれない。
チームは好調だというのに、自分だけどんよりとした気分で思わず溜息を吐いた。
テラヘルツブレスレット――氷も溶かすテラヘルツ人工鉱石がコリや血行にはたらきかける
かじかむ手をこすり合わせながら、試合開始を待っていると、
「美穂!」
サポーター仲間の真理子から声を掛けられた。
彼女は相変わらず元気そうだ。
今日はさすがに雨天だから雨具のポンチョを身に着けている。しかし、真理子は天気のいい日なら冬でも半袖のレプリカユニフォームで元気よく応援しているのだ。
寒くないのだろうか? 確か、同じ世代だと聞いていたのに……どうしてこんなに差があるのだろう?
「美穂、最近、疲れた顔してるけど、どうしたの?」
「実は、最近、年のせいか肩こりがひどくて……。90分間、手拍子を続けるのがつらいの。更年期のせいか冷えもひどくて。そろそろ、スタジアム通いはやめて、自宅でネット配信を見て応援しようかな、なんて思い始めてるわ」
答えながら思わずあくびまで漏れてしまう。
「ごめんなさい……、最近、冷えのせいもあってかよく寝られなくて。こんな腑抜けた状態で観戦していたら、一生懸命走っている選手に失礼よね」
「だったら、今日はこれを貸してあげる。実はね、私もちょっと前までは、あなたと同じような悩みを抱えていたのよ。でも、これを使うようになってから変わったの」
そう言って、真理子はバッグから何かを取り出した。
「それは何?」
「以前、パートナー企業とのコラボ商品で磁気ネックレスが販売されたの覚えてる?」
「覚えてるわ。デザインも素敵で欲しかったけど限定だから買い損ねちゃったの。磁気ネックレスは選手も使ってるって聞いて興味があったんだけど……」
「私は買って使ってみたの。それがよかったから、そのパートナー企業が販売しているこの『テラヘルツブレスレット』も買ってみたのよ」
「テラヘルツって何? 初めて聞いたわ」
「テラヘルツというのはテラヘルツ波を放射する人工の鉱石なんですって」
「テラヘルツ波?」
「テラヘルツ波というのは、1秒間に1兆回(=テラ)の分子振動をしているそうなの。さまざまな物質を透過することができる波長で、テラヘルツを氷の上に乗せるとすぐに氷が溶け出すらしいわよ」
「まさか……、熱湯でもないのに氷を溶かすだなんて」
「騙されたと思って着けてみてよ。テラヘルツ人工鉱石は人間の身体の分子レベルにはたらきかけてくれるから、血行の促進や冷え・コリを軽減する作用が期待できると言われているの。最近は、磁気ネックレスと両腕に『テラヘルツブレスレット』を身に着けて観戦するのが私のお決まりのスタイルになっているわ。立っているのがつらい時は、足に着ける時もあるのよ」
真理子が手渡してくれた「テラヘルツブレスレット」を半信半疑ながら、手首に着けてみる。
「ブレスレットで冷えや肩こりが改善できるのだろうか」と先ほどの説明が信じられずにいるが、正直なところ藁にもすがりたい気持ちだったのだ。少しでもこの冷えが改善されれば御の字だと思いながらスタンドへと向かった。
そして、主審のホイッスルで試合が開始する。
試合が始まって15分が経過。いつもの雨の日なら、そろそろ手足が冷え切って試合に集中できなくなってくる時間帯だ。
「え……? 雨の中なのに、身体が冷えるどころかだんだん温まってきたような気がする。それに、いつもならこうやって手を挙げて応援していると肩がつらくなってくるのに、今日は大丈夫みたい」
さらに試合開始から30分が過ぎた。
「うそみたい。本当に手が温かい。これは『テラヘルツブレスレット』を着けているからなの? これなら今日は携帯カイロを使わずに済みそう」
それに、今日はまだ疲れずに手拍子を送ることができている。
応援するチームも、先ほどから幅を取って左右に揺さぶる攻撃を何度も仕掛けていた。
センターサークル付近での激しいプレスから奪ったボールをショートカウンターで素早く前へと繋ぐ。
敵ディフェンダーを翻弄するように、左サイドから右サイドへ大きくサイドチェンジした後、中央に入れたクロスを走り込んだフォワードがボレーでゴールへと叩き込んだ。
ネットが揺れると同時にゴール裏スタンドも大きく揺れる。
スタジアムには、「ゴール!」というアナウンスが鳴り響いた。
一連の流れるような攻撃に目を奪われた私は、自然と両手を挙げてガッツポーズしていた。
「え、嘘……今、スッと自然に手が真上まで上がった? なのに、肩が痛くない……。ここ最近、小さくガッツポーズしかできなかったって言うのに」
チームはその後もゴールを重ね、無失点で勝利を決めた。ゴールが決まるたび大きくガッツポーズをしたが、肩に違和感が生じることはなかった。
チームの勝利ももちろん嬉しい。しかし、それ以上に、雨の中という悪環境にも関わらず、若い頃のように試合を楽しむことができたのが何よりも嬉しかった。
試合後、ゴール裏へ挨拶に来た選手に思い切り手を振ることもできた。
「どうもありがとう! おかげで試合を最後まで楽しめたわ」
試合前より楽になった肩で、両手を真上に挙げて真理子とハイタッチを交わす。
「力になれたみたいでよかったわ」
シンプルなデザインで軽いテラヘルツブレスレットだからいつでも身に着けていられる
その後、「テラヘルツブレスレット」を購入した私は、仕事中も常に着用するようになった。
水晶とテラヘルツ鉱石が組み合わされた「テラヘルツブレスレットLite」と、テラヘルツ鉱石だけが使用された「テラヘルツブレスレット」の2種類が販売されていると知って、1つずつ購入してみたのだ。
その時の服装や気分に合わせて使い分けるときもあれば、肩こりや冷えの度合いで使い分けるときもある。
シンプルなデザインなので、ファッションの中で変に浮くこともない。軽いので、着けたまま寝ても気にならなかった。
――そして、1ヶ月が経過した。
季節は秋から冬へと移り変わり、いつもなら震えながら観戦をする季節がやって来たが、「テラヘルツブレスレット」のおかげで例年よりつらくないと感じている。
肩こりや冷えが軽減され、夜もぐっすりと眠れるようになった。
そして、リーグ戦も佳境を迎えている。
いよいよ今日のアウェイ戦で勝利すれば、他会場の結果に関係なく自力での優勝が決まる。
ゴール裏スタンドで真理子の姿を見つけた私は、彼女の元へ駆け寄った。
「この前はありがとう。『テラヘルツブレスレット』のおかげで、今では冷えに悩まされず観戦できているわ。実は、来年以降はシーズンシートの購入もどうしようか迷っていたぐらいだったんだけど……。これからも、スタジアムで応援しようと思っているわ」
「それはよかったわ。これからはまた声出し応援だって少しずつ解禁になっていくんだから、今まで通り一緒に応援しましょうよ」
「ええ、そうするわ」
「以前より顔色も良くなったように見えるわね。血流が改善されたのかしら?」
「きっとそうだと思うわ。最近はよく眠れるようになったし、肩こりも改善されたし、飛び跳ねて応援してもつらくないし。これなら、昔みたいに海外遠征も楽しめそう」
「今日、優勝が決まったら、来年の海外遠征も一緒に行きましょうよ。そして、来年はアジアのチャンピオンになれるようチームに手拍子を送りましょう」
「そうね」
太鼓のリズムに合わせ、90分、精一杯の手拍子を送る。
今日も、最後まで寒さに震えることなく観戦することができた。
そして、チームも勝利を飾り、見事、優勝を決めた。
笑顔でトリコロールの傘を振り、挨拶に来た選手たちに向けて「祝・優勝」と書かれたゲートフラッグを掲げることができたのだった。
「テラヘルツブレスレット」に出逢えたおかげで、まだまだ元気に応援を続けられるような気がする。
満面の笑みを浮かべ、選手たちに向け手を振った。
これからも、スタジアムでたくさんの感動を味わうことができるに違いない。
※この物語は使用した方々の感想を元に作成したフィクションであり、作中の登場人物や団体名はすべて架空のものです。また、効果の感じ方には個人差がございます。