高齢者の食事量が減ってしまった時に知っておきたい家庭でできる工夫を紹介【駒沢女子大学教授 工藤美香先生インタビュー:その2】【PR】

高齢者の食事量が減ってしまった時に知っておきたい家庭でできる工夫を紹介【駒沢女子大学教授 工藤美香先生インタビュー:その2】【PR】
2025.02.06

高齢者の食事量が減ってしまった時に知っておきたい家庭でできる工夫を紹介【駒沢女子大学教授 工藤美香先生インタビュー:その2】【PR】


様々な理由で食事の量が減ってしまいがちな高齢者。年齢のせいとは考えずに、対策をすることが大切です。 

在宅介護者が知っておきたい高齢者の食事や栄養について、多くの在宅訪問栄養食事指導の経験がある管理栄養士の工藤美香先生(駒沢女子大学 教授)にお話を伺いました。今回はその中から、食欲がない時に気を付けたいことや家庭でできる工夫についてご紹介します。

>>管理栄養士・工藤美香先生インタビュー:その1「高齢者の栄養不足について」はこちら

食事量が減った時に気を付けたいこと

原因を探しましょう

高齢者の食欲低下の原因には、飲み込む力の減少、口の中で歯が折れていたり口内炎があったりといったオーラルフレイル(“口”に関連する機能が低下しつつある状態のこと)、持病の進行、下痢や便秘、胃もたれなどといった消化吸収機能の低下などが考えられます。体調にも注意しながら原因を探しましょう。

介護者は一生懸命なので、それだけ相手にも頑張って食べて欲しいと思ってしまいます。しかし、毎日食べるようにと言っていると、言われる方は嫌になってしまうものです。体調を見て食べられる時に、効率よく栄養がとれるものを食べてもらうようにしましょう。

手術の後や呼吸器疾患などのある方は、食べるだけで疲れてしまいます。食べるとハアハアと息切れしてしまう方には、1回の食事量を減らし、食事の回数を増やして栄養を摂取してもらうようにしましょう。

食事の形態を見直しましょう

食事量が減る一因に「食べるための機能」と「食事の形態」が合っていないため、食べられないことがあります。その方の噛む力や飲み込む力に合わせた食事の形態にすることも大切です。

現在の食事の形態が合っていないサインには、こんなものがあります。

  • ・いつまでも飲み込まず食べ物が口の中にある
  • ・食事中にむせてしまう
  • ・食後に食べ物が口の中に残っている
  • ・食べ物を噛まずに丸飲みしている
  • ・食事の途中に「あー」と声を出してもらうと、ガラガラ声になる

噛むことと飲みこむことは一連の流れですが、噛むことに問題があるのか、飲み込むことに問題があるのか、口の中のどの場所に食べ物が残っているのかなどを確認し、食事の形態を見直していきましょう。

>>管理栄養士・工藤美香先生インタビュー:その1「高齢者の栄養不足について」はこちら

栄養補助食品しか摂取できない時に気を付けたいこと

体力が低下していて、栄養補助食品しか摂取できないことがあります。そんな時に気を付けて欲しいことが2つあります。

ひとつは、栄養補助食品を飲んでいても、別に水分をしっかり取ることです。普段は食事からも水分を摂取していますが、栄養が凝縮された栄養補助食品だけでは、水分が足りなくなってしまいます。こまめに摂取できるよう、手の届くところにお茶などを置いておくとよいでしょう。また、塩分の含有量が少ない栄養補助食品がありますので、味噌汁で塩分を補給することもよいでしょう。

ふたつ目は、栄養補助食品しか口にしていない時でも、口の中のケアをすることです。歯や歯茎のマッサージをしないと、歯が抜けたり、歯茎が腫れるなど口の中の状態が悪化してしまいます。また、口の中が汚いと、菌を含んだ唾液と飲食物を一緒に誤嚥(ごえん:気管に入り込むこと)して起こる誤嚥性肺炎になる危険性があります。

食べられない時にはこんな工夫を

食べられる時に食べてもらいましょう

食べられない時には1日3食にこだわる必要はありません。本人が食べたい時に食べられるような環境にしましょう。食事の準備が大変などの理由で1日2食だけという方も、補食という形で合間に食べて補ってください。

合間でたくさん食べてしまうと食事が食べられなくなってしまうので、少しの量で栄養価が高いものがおすすめです。

食事に栄養をプラスしましょう

食事量が減っている場合には、少量でも栄養価が高い食材をプラスすることを心がけましょう。

たんぱく質以外のプラス食材として油分を積極的に取り入れるようにしましょう。油は1グラムで9キロカロリーもあるので、効率よくエネルギーを摂取できます。特にMCTオイル(中鎖脂肪酸)は、一般的な油よりもすぐにエネルギーになりやすい特徴があります。サラッとしていて摂取しやすいので、食品やおやつにプラスすると良いでしょう。私が勤務していた病院では、おかゆに大さじ2杯ほど入れていました。油分を入れる事でおかゆが甘くなっておいしく感じるという感想をいただいていました。

他にも食事にちょい足しがおすすめです。栄養を強化するちょい足し、飲みこみを助けるちょい足しを意識しましょう。

例えば、おかゆに卵や鮭フレークなどをちょい足しすることで、たんぱく質が補えます。風味が変わらないタイプのプロテインのパウダーでも良いでしょう。サーモンの刺身につぶしたアボカドを和えれば、まとまりやすくなり、飲みこみやすくもなります。また、エネルギーも上がります。食事は無理やりにするのではなく、楽しく簡単に調整することが大事です。

>>MCT6.0g配合(1個72g当たり)のMCTゼリーはこちら<PR>

>>リン・カリウム含量を低く調整した高たんぱく質粉末はこちら<PR>

栄養補助食品のアレンジで無理なく栄養摂取

高齢者は栄養補助食品といわれると、いままで経験したことのない食品なので飲んでくれないことがあります。そんな時には、慣れ親しんだ味にアレンジしていくとよいでしょう。

例えば卵と砂糖を加えてミルクセーキのようにしたり、フレンチトーストやプリンなど牛乳を使う代わりにバニラ味の栄養補助食品を使ったり、果物と栄養補助食品を使ったスムージーにしたりすると良いでしょう。パンやクッキーを栄養補助食品に浸して普通のおやつのように食べるだけでも、ふやけて食べやすくなりますし、栄養もプラスされます。ホイップクリームやあんこをトッピングしても、美味しいです。

カップに入っているゼリー状のものであれば、デザート感覚で食べてもらえますし、最近では小豆味などのお汁粉風にできるものもあります。コーンスープ味のものなら、市販のコーンスープと同様に味わえます。いろいろな味があるので、好きなものを選んでもらいましょう。

>>管理栄養士・工藤美香先生インタビュー:その1「高齢者の栄養不足について」はこちら

食事制限のある方は宅配弁当も

制限食が口に合わず、食事が食べられなくなってしまう方もいます。かつて担当していた方の中にも、原因不明だと思われていた食欲低下の原因が、減塩食が食べたくないからだったというケースがありました。

このような場合には、食べる量が少なければ摂取する塩分も少ないので制限のない宅配弁当を利用してもよいでしょう。ただし、心不全や浮腫が重度の場合には、減塩が必要です。漬物や追加の調味料は除くとよいでしょう。汁物は控えてください。

食事制限がある方は、宅配弁当で1食分をしっかり調整することで、残りの食事の楽しみを広げることもできます。まずは、相談しやすい人に相談をして専門家に繋げてもらい、詳しいアドバイスをもらうようにしましょう。

早く気付くことが大切です

栄養不足に気付くポイント

栄養面や食事面で気を付けることも大切ですが、「栄養不足かな?」と誰かが気付くことが大切です。そこを気付けないと、誰も関わることができません。定期的に体重を測るのがベストですが、難しい場合もあるでしょう。

そんな時には、頬がこけた、目がくぼんだ、ペットボトルが開けられなくなった、車いすに長時間座っていられなくなった、傷ができた時に治りにくくなった、足が細くなった…などの小さな変化を見落とさないようにしましょう。自分でもセルフチェックできるようにしておくとよいでしょう。

ちょっとしたことに誰かが気付けることで、専門家が早く介入することができます。

栄養不足になる前に改善を目指しましょう

栄養不足が進んでからでは、食事だけで治していくのは難しくなります。若い人なら食べて体重を増やせるのですが、高齢者はそうはいきません。体重が減りすぎてから改善していくのは、本当に難しいのです。

なので、栄養不足になる前に誰かがそれに気づき、改善していくことが重要になります。

食欲低下の原因を探り、早いうちから改善を

食事量が減り、栄養不足に陥りがちな高齢者は、少しの量でしっかりと栄養を取ってもらうことが大切です。食欲不振を年齢のせいにせずに原因を探り、ちょい足しや栄養補助食品のアレンジなどで、栄養状態を改善していくようにしましょう。

定期的に体重を測れない方は、顔つきや洋服がゆるくなった、車いすに座っていられなくなった、歩くとふらつくなどの変化から、栄養不足に気付くことが大切です。

次回は介護食作りの悩みを解決するポイントを具体的に紹介します。ぜひ、併せて参考にしてください。

工藤 美香先生(管理栄養士・ 在宅訪問管理栄養士)

病院・施設・在宅の栄養管理に長く携わっており、急性期病院勤務時にはNST(栄養サポートチーム)の中心メンバーとして活躍。現在は駒沢女子大学 健康栄養学科の教授として、臨床栄養学概論や臨床栄養学などの指導を担当するほか、日本在宅栄養管理学会理事も務めている。

PAGE TOP