在宅介護者が知っておきたい高齢者の栄養不足について【駒沢女子大学教授 工藤美香先生インタビュー:その1】【PR】

在宅介護者が知っておきたい高齢者の栄養不足について【駒沢女子大学教授 工藤美香先生インタビュー:その1】【PR】
2025.01.30

在宅介護者が知っておきたい高齢者の栄養不足について【駒沢女子大学教授 工藤美香先生インタビュー:その1】【PR】

食事の量が減り、食べていても栄養が偏りがちな高齢者。在宅で介護をしている方の中には、高齢者の食事内容や何に気を付けたらいいのかがわからない方も多いことでしょう。 そんな在宅介護者が知っておきたい高齢者の食事や栄養について、多くの在宅訪問栄養食事指導の経験がある駒沢女子大学教授であり管理栄養士の工藤美香先生にお話を伺いました。今回はその中から、知っておきたい高齢者の栄養不足や日常生活で気を付けたいこと、そして栄養補助食品の上手な取り入れ方についてご紹介します。

高齢者の栄養不足について

高齢者に不足しがちな栄養とは

人は年を取ると全体的に食べる量が少なくなっていきます。食事が取れなくなる理由の一つに、噛む力や飲みこむ力が弱くなることが挙げられます。

口の機能が低下すると柔らかい食べ物を好みます。ご飯やパン、麺などの炭水化物に偏りがちなため、高齢者の多くは、三大栄養素の一つであるたんぱく質が不足しています。たんぱく質は、からだの組織や筋肉の材料になる栄養素です。全体的にエネルギーが足りていないと、身体を動かすのに必要な栄養が不足し、筋肉を壊してエネルギー源にすることになります。

筋肉が減ると身体を動かす力や体力が不足し、食べるための体力もなくなってしまいます。

注意したい“隠れ栄養不足”

栄養不足になると、食べるための体力や飲みこむ力が衰えてしまい、さらに食べられなくなる悪循環に陥っていきます。また、食事をしているから大丈夫だと思っていても、ご飯やパンなどの炭水化物に偏っていたりすることがあるので注意が必要です。

体重は維持できていても、筋肉量が少ないという栄養不足もあります。元気そうに見えても、食事の内容に問題があったり、体組成を測ってみると体脂肪が多くて筋肉が少なかったりすることがあるのです。

見えないところで栄養不足に陥っているというパターン、つまり“隠れ栄養不足”がかなりあるのではないかと考えています。隠れ栄養不足になると、感染症にかかりやすくなったり、傷が治りにくくなってしまいます。

食生活で気を付けること

ご飯+メイン+野菜でバランスの良い食事を

「3食食べた方が健康に良い」と思っている方も多いですが、高齢者は3食にこだわるよりも、炭水化物だけではなく、栄養をバランスよく摂ることが大切です。「主食+メインのおかず(肉・魚・卵・豆腐のいずれか)+野菜1品」を食べていくようになると、バランスの良い食事になります。高齢者は特に、積極的にたんぱく質を取りましょう。また、食事をエネルギーに変えるためには、豚肉や大豆などに含まれるビタミンB1が必要です。

今まで、メタボ予防などのために食べないように意識してきた方が、実は栄養不足になっていることがあります。高齢になったら、どこかの時点で、「食べる」という考え方にシフトしていくことが必要です。そのことに気付いてもらうには、基準となる体重を知ってもらうようにしましょう。肥満度を示すBMI※では、18.5以上~25未満の間に入っていると標準、18.5未満は栄養不足の恐れがあります。自身の体格が基準と比べてどのくらいなのかを知ることができます。必要な人にはもっと食べないと栄養不足になることを本人、家族に伝えてあげるとことが大切です。

高齢者では、フレイルの予防及び生活習慣病の発症予防の両者に配慮する必要があることも踏まえ、当面目標とするBMIの範囲を21.5~24.9 kg/m²としている。(日本人の食事摂取基準2020年版)

※BMIの算出方法:体重kg÷(身長m)²

飲みこむ力に合わせたとろみを

食事や水分でむせる場合には、とろみをつけてむせないようにしましょう。水分の場合、「中間のとろみ」と呼ばれるのが、スプーンからゆっくり流れるぐらいのとろみです。それよりも薄いとろみで十分な方もいます。避けたいのは、とろみのつけすぎです。本人の状態に合わせてとろみをつけましょう。

手軽にとろみをつけるには、市販のとろみ調整食品を使うのがおすすめです。 飲み込む力が落ちた方は食べるのに時間がかかります。とろみを片栗粉や小麦粉とバターのルー等の食品でつけると、温度や時間の経過でとろみの状態(かたさ等)が変わってしまうため危険になることがあります。

ポイントは、「食べてむせないこと」と「喉に残らないこと」です。但し、むせてなくても誤って気管に入っている場合があるので、食事中の観察が必要です。どの程度のとろみが合っているのかは、医師や看護師、管理栄養士などに相談しましょう。誰に相談していいか分からない場合は、まずは自分が相談しやすいケアマネージャーやヘルパーに話し、専門職に繋げてもらうと良いでしょう。

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食生活以外で意識すること

日中はできるだけ活動を

日中はできるだけ活動してもらいましょう。外出が難しい方は、自分でできることは自分でやってもらうようにしてください。外出が難しい方はベッドから車いすに移動する、ベッドサイトで立ち上がってもらうだけでも良いです。可能な範囲で、日中は身体を動かすようにしましょう。

睡眠導入剤を使用している方は、薬が蓄積されていくと活力が低下し、日中にうとうと浅く眠ってしまうこともあります。その場合は、医師や専門職と相談しながら、日中は活動でき、夜に眠れるぐらいの薬を処方してもらうことが大切です。

周囲の人と関わりましょう

高齢者は積極的に人と話すことも大切です。ボランティアなどの社会参加やデイサービスなどを利用して他人と関わると、閉じこもりによる認知症やうつを防ぎます。他人との交流がないと認知症のリスクが高くなり、そこから食欲不振になることもあるので、他人との関わりは大切です。

栄養補助食品の取り入れ方

まずは栄養を摂るために使ってみる

食事の量が足りずに本当に体力が低下している時は、バランス良く栄養が摂れる栄養補助食品だけでも摂取して欲しいなと思います。食事が摂れずにどんどん体重が減ってしまう時には、効率よく栄養が摂れるということを重視し、体力が回復して来たら食事の方で補っていきましょう。いつでも使用をやめることはできるし、使い続けることもできるのが栄養補助食品です。

理想的な使い方は、特別な食品(栄養補助食品)だと思わせないこと。できるだけ普段の食事や間食に取り入れる形が良いと思います。簡単に摂取してもらいたい場合には、パック状のものをジュースのように飲んでもらうようにしましょう。125ミリリットルの小容量で200キロカロリーぐらいのものがありますが、その量でも1回では飲み切れない方は、手元に置いて少しずつ飲んでもらいましょう。あまり長時間かかるようであれば、少しずつコップに移した方が飲みやすく、衛生的です。

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栄養補助食品を選ぶポイント

液状、ゼリー状、粉末状など栄養補助食品には様々な種類があります。形状は高齢者の食べる機能や嗜好に合わせて選んでください。

栄養補助食品は、介護者がおいしいと思うものを選びましょう。珍しい味は続かないので、食べなれた味の方が良いと思います。甘いものが嫌いな方には、スープ味やとうふ味のものもあります。

いくつかの味を展開しているメーカーもあるので、バラエティパックなどで合う味を見つけましょう。 要介護者が食べて喜ぶ姿を見ることは、介護で感じる楽しみでもあります。家族は「こんなことをしてあげられた」と感じることもできるでしょう。

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生活を見直して栄養不足予防を

高齢者は食事の量が減り、食べていると思っても食事が偏っていることがあります。食事は「ご飯+メインのおかず+野菜」にする、その方に合ったとろみをつける、日中は活動をする、他人との交流を大切にした生活を心掛けることも大切とお話を伺ってきました。

2回目以降は、具体的な介護食の悩みについてお話を伺っています。次回は、高齢者の食事量が減ってしまった時に知っておきたい、家庭でできる工夫についてご紹介します。ぜひ、併せて参考にしてください。

工藤 美香先生(管理栄養士・ 在宅訪問管理栄養士)

病院・施設・在宅の栄養管理に長く携わっており、急性期病院勤務時にはNST(栄養サポートチーム)の中心メンバーとして活躍。現在は駒沢女子大学 健康栄養学科の教授として、臨床栄養学概論や臨床栄養学などの指導を担当するほか、日本在宅栄養管理学会理事も務めている。

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